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「なるほどね。確かにこれならヴィヴィオのための新たなゆりかごになる」
無傷で残っていたラボの1つでユーノは残された可能性を目にする。
「そうゆりかごにはなる。だが相手はそれらを破壊するために作られた存在。これはその存在以外に対する抑止力にしかならんさ」
ゆりかごにほぼそっくりな戦艦。
保存状態が悪く聖王のゆりかごではないこれは研究のために使われた程度だ。
「何よりこれだけでは人間相手にも勝てなかったぐらいだからね。王を打ち勝つには……こいつしかないだろう」
ユーノは手渡された資料に目を通す。
文字からしてスカリエッティの書いたものではないと思われるが、ヴィヴィオのために設計されているということだけは分かる。
「これは素晴らしいデバイスと追加ユニットですね」
「まったくだ。聖王と一緒にいるウーノとトーレが普段の戦闘のデータから考えた最高作さ。ここに私の仕上げを入れれば、古代ベルカに対抗できる最新鋭デバイスが完成さ」
いつになくテンションの高いスカリエッティを見て、ユーノはこの人も悪人をしていたが博士として作り手の情熱は本物なんだなと改めて理解する。
「そんなわけで私はこれから彼女達と合流するまでにこれを完成させる。ユーノ君はこいつの修復に必要なパーツを探しておいてくれ。以前の私のデータにある程度のリストが残っているから好きに見てもらってかまわんよ」
「了解。そっちのデバイスに必要なパーツもリストアップしておいてください」
「おっとそうだったね。ウーノやキミのような補佐がいないとどうにもうっかりな癖があるな」
ここ数日彼と生活をともにしているが、曲がらずに生きていれば強引な手段を持たずと戦闘機人のような存在を認めさせれる世界を作れただろう。
そしてその才能以上に人間味あふれる人間だったんだということも分かった。
「これも言い忘れてた。出かける前にキミも変装したほうがいいだろう。どうやら聖王はお尋ね者にキミは行方不明者になっている」
「変装ですか。……しかたないか。クアットロ、僕の髪を切ってくれないか?」
「あらら。こんな綺麗な髪を切るのは惜しいですわ。それに切るというのは大きく印象を変えられるので最後の手段まで置いときましょうよ」
笑顔の彼女が手にしているのは見事なワンピースなど。
「…マジ?」
「うんうん。あなたを見た時から着せてみたかったんです」
確かに髪を切るという大技は最後まで置いといても損はないが、こんな変装はどこぞのアニメやらゲームだけで十分だと思う。
なんて贅沢を言える身分でもない社会的立場にユーノは頭を悩ませる。
「ユーノ君は綺麗だし声も高い。それにクアットロの服のバリエーションは豊富にあるからな。ドゥーエほど完璧にはなれんだろうが体格の近いキミになら扱えるだろう」
確かに彼女の持ってきた衣装の数は恐ろしいほどにある。
「分かりました」
諦めたユーノをクアットロは嬉しそうにメイクアップしていくのだった。



「…どう見ても作業してそうな女の子なんだけど」
キャップとポニーテールにツナギ。
内側のシャツが可愛らしさがでてるかなっと言ったところだ。
「当然じゃない。そういった店に買い物行くのに、こんなドレスとかじゃ逆に目立つわ。車は私が運転するし衣装の予備も積んでいきます。店や相手によって変装を変えるのは基本ですわ」
「流石クアットロ。見事な仕事だと感心するわ」
「そうでしょドゥーエお姉さま……ってドゥーエお姉さま!?」
「何幽霊みた顔してんのよ。ドクターまでそんな顔しますぅ?」
「いや何年も音沙汰ないキミがいきなり真横にいたらこんな反応するだろう。って今まで何をしてた」
JT事件から軽く5年ほど。
姿形もなくゼストに最後刺されたという報告しか聞いていなかったナンバーズ全員には驚きのほかなんでもない。
「ここを隠れ家にして普通の生活をしつつ妹達の頑張りを聞いてました」
『おい』
「社会の荒波にもまれてアルバイトで食いつなぐのも案外悪くなかったわ。いやてっきり私がここにいることを知っててきたものかと」
以外に表情豊かに会話するドゥーエにやや困惑しつつも話を進める。
「知るはずがないだろう。一応本物のドゥーエか確かめさせてもらうよ」
「はいはい。IS発動。とりあえず……これかな」
その姿はシグナムそっくりになっていた。
「この能力ならこの衣装を活かせるな。……って僕別に行かなくていいなじゃない」
「それはだめよ。二人変装できるほうがたの…便利ですわ」
今絶対楽しいと言おうとした。上手く言われて丸めこまれたのか!
「で、ドゥーエはこれからどうするんだい? 私達に付き合うのもスルーするのも自由だ」
「ドクターにしては珍しいことを言うのね。管理局に喧嘩をまた売るのでしょ?」
ドゥーエの質問に首を横に振る。
疑問に思ったドゥーエにその答えはすぐに返ってくる。
「最高の悪党がお送りする正義の味方さ。管理局にも喧嘩は売ってるが、今回の目的はそれ以上の存在さ」
「なるほどね。最近世間を騒がしてるエヴォとかいう王が相手か。…他の妹達は?」
「全員手を貸してくれるよ。管理局と聖王協会からもそこの元司書長と聖王の二人が裏ワザで引き抜いてくれた。そして私達全員もめでたく脱獄さ」
ユーノ・スクライア。
管理局に潜入するさいに六課関係者として調べておいた人物。
「へぇ。面白いことになってるのね」
「そうだね。これほど面白いことはそうそうないさ。あのエースオブエース達を倒した相手を、倒そうってんだからこれほど酔狂な笑いも簡単には見れない」
「いいわ。私も協力する。お礼は妹達と再会でいいわ」
「了解。ウーノとトーレもヴィヴィオと各地を巡っていたけどこちらに合流する。それまでにやることもあるから手伝ってもらうよ」
あやしく目が光るクアットロに押し倒され、いわゆる変装をさせられるドゥーエ。
どうやら悪女と思われた彼女も意外な趣味があったものだ。
「さぁ買いだしにきますわよ!」
気合溢れるメガネに連れられて2人はトボトボとついていくのだった。
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