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スキマ妖怪1人居たら外の世界はまだまだ恐怖のどん底に落とせるんじゃないかしらねぇ。
偽造されたパスポートを手に私と早苗はブルガリアの地に降り立った。
車ごとスキマで移動とかホントやることが大胆だわぁ。
「早苗達の国ではヨーグルトの名前のほうが有名かもね」
「あはは。たしかにそれ以外はあまり知らないですねぇ。イギリスとかそっちのほう出身と思ってましたよ」
「ブラド・ツェペシュはルーマニアの人物よ。ま、私はその隣国であるブルガリアに館を構えていたわけ」
適当にツェペシュの末裔を名乗ってるとか言った奴は表でていいわよ。
「私はてっきり歴史的にツェペシュの末裔を自称してるかと思ってましたよー」
うわー目の前にいたわ。
「まぁ私が生まれたときでもまだブラド・ツェペシュの串刺し公は恐れられたということよ。それと彼はルーマニア独立の英雄とも扱われているわ」
「ところ変われば神と悪魔は簡単に入れ替わるってことですか」
「その通りね。と、故郷のカザンラクに付いたわね。6月ごろだと薔薇が美しいところよ」
「あ! ローズオイルで有名でしたね。カザンラクってブルガリアの街だったんですかぁ」
有名なものは1つがあるとは言え今は……少しさびしい街ね。
紅魔館にある日用品は、ここの職人達が作ったものも少なくはない。
元々が要塞都市だったとはいえ……軍事産業で名をまた広めてるなんて悲しいわね。
「ん、どうしたんですか? あの建物が何かあります?」
「あぁ。吸血鬼として人間と敵対もしたとはいえ、人間が人間を殺すために作るものがこの街に堂々とあるのはいい気がしないわねってね」
化け物を退治するのは世界変わらず人間だ。
でも、その人間を殺すのもまた人間。妖怪達はもはや本当に不要の世界なのかもしれない。
「ちょっとがらにもない姿を見せてしまったわね。紅魔館のあったところはまだ先だから早く行くわよ」



「いやぁ見事に無残な姿ねえ」
雑草が庭を支配し、ツタが館を多い窓が割れている。
美鈴に庭手入れを任しているがこの姿を見ると、あの子も真面目にしてるのだなと改めて理解する。
「流石にこれを掃除するのは骨が折れそうです」
「あぁいいわよ。神聖な場所でもないし、ここに戻ってくることはもう無いでしょうから」
改めて私達は幻想郷という檻の中でしか生きれない存在になったと思い知る。
夜は闇を忘れ、ヒトはヒトとのみ戦い我らを忘れる。
お伽噺やゲームの存在でしかない私達は、せいぜいホラー映画とかでキャーキャー言われる程度なのだろう。
ゲームで言えばバイオハ○ードってやつね。
吸血鬼とか無しでゾンビが暴れまわるんだから、最近はゲームですら忘れられた存在な気がしたわ。
「大丈夫ですよ。私はレミリアさんのことは忘れませんし、大切な友達です!」
「……さとりの能力でもあるの?」
「まさか。でも、いつでも胸張って堂々としているレミリアさんが悲しそうな顔をしていたら想像はつきますよ」
それもそうか。
お嬢様は少し我儘なぐらいで丁度いいわね。
「ありがとう。そうね、早苗の家みたいにどこまで保存されているか分からないけど、少しばかり宝探しでもしてみない?」
「主の許可付きで悪魔の館でトレジャーハントですかぁ。魔理沙さんなら大喜びしそうですね」
「ふふ。そう言いながら早苗もわくわくした顔してるじゃない」
元々は私の持ち物だしね。
「他の人間が大半を持って行ってそうだけど、私や咲夜にパチェのお宝は全部もっていけるものじゃないわ」
「……そう言えば咲夜さんっていつからレミリアさんといるんですか?」
「ふふ。それは秘密よ」
ヒトとしては長い時間を持ちすぎている。そんな咲夜を理解できるのは当時は私だけだったでしょうね。
「ま、幻想郷にもっと馴染んだらいずれ教えてもらえるかもしれないわね。主とはいえ咲夜の心情を勝手に口開くものじゃないから、その時まで生きてなさいよ」
「当然です。私は奇跡を起こす程度の能力です。そしてレミリアさんが私を友として望めば、奇跡を起こす程度の運命になるのは当然じゃないですか」
奇跡を起こす程度の運命か。そりゃ神様だって超えてそうねえ。
「その奇跡で残っているお宝でも頂戴していきましょうか。外の世界のレトルト食品って奴とか大量に買うお金ぐらいは作れそうでしょ」
うちにも缶詰とかがいくつかあるけれど、人間にとったらアレはすごく便利な道具だ。
武器なんて作っている暇があれば、餓死する人間を減らす努力ができるだろうに。
「さて侵入防止に鎖やらが巻かれているわけだけれど、実はこっちの壁に隠し扉があるのよねー」
ん、硬いわね。
ちょっと本気出す。
……結構本気出すわよ。
…………手加減しないわ!

ゴゴゴッと音を立てようやく動き出す。
「まぁ私の手にかかればこんなものよ」
「だいぶ汗かいてますよ?」
「気のせいよ気のせい」
早苗と居るとどんどんカリスマが抜けている気がするわ。
いや、パチェや咲夜と居る時と同じぐらいリラックスしていると言うべきかしら。
霊夢のように私を倒した存在でもなく、パチェのような対等な存在でもない。咲夜のように私を全てと仕える者では間違ってもない。
魔理沙のように見て面白い人間でもない。訂正。そこそこは面白い。
でも何か違うこの感覚は、やっぱりパチェのような親友と思える存在に近いわね。
「早苗」
「はい?」
「いやなんでもないわ。とりあえずあちこち見て回るけれど、咲夜の能力が適応されていないから少し地形が変わって感じるわよ」
空間を広げるとはなかなか便利な能力だと思う。
改めて昔の家を見ると狭いわ。
分かりやすいところに置いてあったものはほとんど無くなっているわね。
「さてと、残ってるとしたらここよね」
フランがいた地下室とは別のさらに奥に隠された部屋。
「……何もないようですが?」
「甘いわね早苗。隠し扉の向こうにある部屋。さらに奥にあるのよっと」
天井のスイッチと床のスイッチを押すと……ほらでてきた。
「うわっ!? 金貨とか始めてみました」
「紅魔館に何かあった時には咲夜 美鈴 パチェそしてフランが逃げて暮らせるように用意しておいたのよ。まぁ紅魔館そのものが幻想郷にある今では無用な心配ね」
「レミリアさんは優しい悪魔ですね」
「悪魔の囁きはいつでも甘いのよ。さてと、探索しながら思い出にも浸れたしお土産を用意して私達の家に帰りましょうか」
ここはもう家じゃない。
外の神社も紅魔館も今はただの抜けがら。
「そうですね。帰りましょう。私達の家に」




「で、人里初め全部の場所に宴会できるお酒とか買うお金に化けたわけね」
紫 早苗 レミリアと異色の3人がテーブルを囲み食事を楽しむ。
紅魔館 守矢神社の主催で幻想郷全土で宴会が行われている。
そのうちの1つとして、紅魔館のテラスでこの3人は今回の隠れた功労者を招き食事を楽しんでいる。
「外に残したものだから幻想郷にそのまま持ってくるのはナンセンスじゃない? あ、別に優しい悪魔とか言われて気分よくしたわけじゃ…もにょもにょ」
「ふぅん。……いいじゃない気分が良くても。ここは弾幕でもの言う世界よ。恐怖だけで妖怪の威厳を見せるには風見幽香とかぐらいにドSじゃないとねえ」
私の身長を見て何か言いたげだなチクショウ。
けど今日の私は気分がいいからスルーしてやろうじゃないか。
「それにしても外で何があったか知らないけど、仲いいわねあんたたち」
「当然だ。パチェに次ぐ親友だからな。このレミリア・スカーレットに愛されるとか奇跡的な運命だ」
「奇跡は私の能力ですから。それに運命が合わされば不可能はありませんよ」
「奇跡を起こす程度の運命ねぇ。まぁ、十分すぎるお礼を貰ったしお釣り変わりに何かあればまた言いなさい。気が向いたら優先的に手伝ってあげるわ」
「そうさせてもらうわ」
「ただしそこ2人。霊夢に関することはお釣りの範囲外だからせいぜい頑張ることねぇ~」
手を振りながら姿を消す八雲紫。
「確かに愛しの霊夢のことも大事だが、今日は親友との旅の終わりを祝して乾杯といこうじゃないか」
「えぇ。これからの歩みにも」
『乾杯』
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あぁ、確かに昔住んでいた場所を見たくなるというのは、妖怪や人間問わずに感じてしまうものかもしれない。
漫画を読むつもりがつい懐かしい故郷の写真を見つけてしまい、こういった気持ちになるのは高貴な存在でも当然のことだろう。
とはいえ幻想郷は外の世界で考えると東方の国で我々が住んでいたヨーロッパとは遠く離れている。
お陰で踏ん切りもつきやすいことを考えると、隣になぜかいる緑の巫女よりは恵まれてるかもしれないな。
彼女のことは愛しの霊夢から紹介はされていたが、私から見れば色違いの偽物程度にしか思っていなかった。
そんな人物が何故隣にいるかって?
同じ質問を自分自身にしてやりたい気持ちだよ。
「私のほうの里にも付き合ってくれてありがとうございます」
早苗の運転する車に揺られて私は日本の外の街を走る。
なんでもUVカットとかいうクリームを塗れば吸血鬼でもある程度は日光を防げるとか。
あ、言っておくけれど私は日光で蒸発とかそんな下級な種族じゃないわよ。
苦手ではあるしたしかに大きく能力は落ちるけれど消滅はしないわ。うん、苦手なだけだから。
ただこのクリームのお陰で不快感も消えて快適な旅ができるのだから、スキマの道具も馬鹿にはできないわね。
「いいのよ。人間と違って私達は長い時を味わえる。こういった無駄を楽しめないと妖怪なんて種族は本当に無駄な存在よ?」
あ、かっこいいこと言えた。
「おぉ! 流石レミリアさんは幻想郷を代表する高貴な悪魔ですね! 神に仕える身の私ではありますが、咲夜さんがレミリアさんを慕う気持ちが分かるぐらいに懐が深い!」
「当然よ。それに私達吸血鬼は悪魔の象徴とはいえ、悪魔も神もところが変われば扱いが変わるものよ。それより、あなた外の世界では女子高生とかだったんでしょ。道具屋の店主が言ってたけど日本では18歳以上しか免許取れないんじゃないの?」
平然と運転している早苗ではあるが、彼女はたしか18年も生きたとは聞いてはいない。
外の世界ではお酒は法律に引っかかるんです! とか言ってたところを見ると確実に20よりは下でしょうしね。
外の法律とは無縁の世界なので飲まされたけど……。
あんた達は外の住人しているうちは20までは呑むなよ。このレミリア様との約束だ。
「あぁ。年齢と免許の偽装は紫さんがやってくれました。練習もマヨヒガでしっかりと藍さんに教えてもらいましたよ!」
それでいいのか幻想郷。
胸をはって今のところ事故はないとはいえ不安になる。
「それに私の住んでた場所も、日本の中では地方の街ですから練習に走らされた新宿とかよりは楽ですよ」
「新宿? それもこの国の街の名前かしら」
「日本でも5本の指に入る都会ですよ。夜でも家の外で本が読めるぐらいに明るく照らされた……幻想郷とは遠くかけ離れた人の街です」
このぐらいの年ごとの外の娘ならきっと誰もが行きたがる街なんだろう。
きっと早苗もこの世界に来る前なら行ってみたいとか言ってたかもしれないわね。
「レミリアさんがそんな表情しないでください。今回ここに来たのは最後の決別みたいなものですから。未練から何から捨てることはできないけれど、別れを告げる機会はいただけたのですからね」
「外から来た霊夢と同じぐらいの小娘と思っていたけれど、あの神の教育は流石ってところかしら。あなたは強いのね」
「そうでもないですよ。神奈子様や諏訪子様と来ることを決めたのは私ですが、この世界に残ってもよかったわけですから決めるまでは凄く悩みましたよ。外の世界の人にとっては私の奇跡や神事も形式だけで満足してしまう程度ですからね。お二人が無くても形だけは残って小さく生きていくことはできました」
この世界でも信仰され残っている神はどれほどいるだろうか?
500年生きたこの私が本気を出しても、悔しいけれどもあの二人がしでかした戦争のレベルで挑まれては太刀打ちできる自身があまりない。
むろんそんなことは口には出さないし朽ちるまで戦うが、それほどまでに本来の力は神としても上位の存在だ。
そんな彼女達すら消える世界。
「この世界を捨てた理由は何かしら? 家族や親族もいたでしょう」
「私は形式だけの神事をして、この先何十年も生きるなんてそれこそやってられませんから。神を敬えだのなんだのと言われたりしてますけれどね、ここ何代もの間誰も神奈子様や諏訪子様を見ることや感じることすらできてないのですよ。それに本当にお二人を愛してるかも我が親族達ながら微妙ですから」
「家族よりも2人を選んだと?」
「結果的にはそうなりますね。まぁ私の直接的な両親は小学生のときに亡くなってますから、私だけであの守矢神社を支えることは現実的にも無理に近かったんですがね。神奈子様や諏訪子様が人を演じて育ててくれたようなものなので家族を捨てたわけじゃありませんよ。神奈子様の言葉を伝えたのに父と母は聞いてくれないまま出雲のほうに行って事故を起こしたんですよ……神のお告げを信じないなんてね皮肉な話です」
「……。悪魔が言うのもアレだけど強がるのはやめてもいいんじゃない。あの二人の前でも、そのことでまだ涙を流していないんでしょう?」
明らかに無理をしているのが目に見えて分かる。
ちょっと意地悪な質問をしてやろうと思っただけだけど、とんだ地雷を踏み込んだようだわ。
「この道はしばらく人は来ないわよ」
そういう運命にあるのだから。
「だから本当にカッコつけるときまでは無様でも悪くないわ。それが人間の特権よ」
車を止めた早苗を抱きしめる。
紅い悪魔らしく無いことは分かってはいるが、この子は神と悪魔に助けられる運命にあったのだ。
「レミリアさん……。少しだけ……」
「いいのよ。私は咲夜を助けるようなお節介な一面のある悪魔だから」
抑え込んでいたものが沢山あったのだろう。
私の胸で大粒の涙を流し声を上げ泣く。
外への未練。親への未練。全てを私にぶつける。
帰ったらあの馬鹿親2人を殴ってやろう。



「いやぁ、お恥ずかしい姿をお見せしてしまいました」
「構わないわよ。私ほどの懐深い悪魔は神にも慣れるのよ。それにあの2人も悪魔と出歩くことを許可してるんだから、何かしら思うことがあったんでしょ」
外の宗教家が聞いたら卒倒しそうよねえ。
「案外何も考えていないだけかもしれませんけどね。あ、私の住んでいた街につきましたよ」
夕方近くなりあちこちに街灯と思われる明りがつけられる。
「あれが蛍光灯ってやつ? 冷蔵庫って道具は便利だから水力発電で活用させてもらってるけど、あの明りは気味が悪いわね」
「さっき言った新宿ではあの明りで昼ぐらいに明るくなってますよ」
「そりゃ物好きな妖怪意外は幻想郷に逃げるわね」
「さて、車はここに置いといて少し歩きますか。もうすぐで私の家のあった場所です」
少し山になった頂上にある神社を目指して階段を上る。
飛ばないというのは少しばかり面倒なことがあるものね。
「見事に手入れのされていない神社があるわね」
「あとを継ぐ人がいないので、たぶん失踪した私の変わりがまた宛がわれるまではこうでしょうね」
こうやって汚い神社を見ると、あのぐーたらな愛しの霊夢は真面目に掃除だけはしていたとよくわかる。
こっちのほうはその上神事から何からしているのだから、賽銭が欲しいなら早苗を見習うべきと言ってやろうかしら。
「少しだけ掃除していきましょうか」
「そうね。外と幻想郷で分けた空間とはいえ、友人の家がこんなのだと見るに耐えないわ」
家のほうや社務所も、おそらく早苗が消えたその日から放置されたままにされている。
「……冷蔵庫の中身が大変なことになってそうですねぇ」
「そうね。それこそ魑魅魍魎のほうが可愛らしいわ」
「外と幻想で分けた。でも、外にも同じものが残っているのは不思議な気分」
「紅魔館も同じように残ってるか……歴史の渦に飲み込まれたか。思ったよりも楽しい旅だわ」
掃除用具を取り出して神社を掃除する旅なんて生まれて初めてだ。
少なくとも幻想郷の神みたいに話が分かるか、抜けがらの神社じゃなければ私がこうして境内にいるなんて想像もつかない。
「お二人のいない神社というのはこれほどまで静かで悲しいものだなんて……」
「そういうものよ。それにしても夜になったてのに街は明るいわね」
これでこの国では田舎よりだって言うのだから信じられないわ。
この景色を私は忘れることはないだろう。
人が私達を忘れ恐れないようになったこの世界。
神への本当の感謝や信仰を忘れたこの世界。
幾度と宗教戦争は見てきたが、人は神すら人の業のため利用してしまうこの世界。
「家の中は寝るぐらいはできそうなので、今日はここを利用しちゃいましょう!」
「まぁ一応早苗の家だからいいんだろうけど。やっぱあんた強いわ」
涙は流せどこの新しい友人はやっぱりただの小娘じゃなかった。
さてこの旅の続きも楽しくなりそうだ。
koikaze.jpg









↑が表紙の本出しますね

文と霊夢の初東方 初百合本になります
「あんたの分ぐらいあるから盗み食いみたいなことしなくてもいいじゃない」
スキマからにゅっと現れた手を掴みそのまま引きずりだす。
もちろんこんな変な登場をできるのは
「まったく。長生きしてんだか子供なのか分からなくなるわ」
八雲紫のほかはいないわけだ。
こういった行動は、霊夢から見ればちょっとした悪戯心程度でやってることにしか感じられない。
他の皆もそう思っているかもしれないが、紫本人は策士とすれば優秀だが乙女とすればまったく行動のできない少女だ。
普段見せる余裕はどこへやらと言ったところで、こんなくだらないことでしか霊夢と上手に触れ合うことができなくなる。
いつもどおりの紫と違う感じはあれど霊夢にはこの気持ちは特に届いてはいない。
「いつまでも少年の心を忘れていないとかいう名言を知らないのかしら?」
「私の数倍も生きてる妖怪の言うセリフじゃないわよ。まだ掃除が残ってるんだけど異変とか急用でもないなら動く気はないわよ」
「ん~。それじゃ私も掃除とかを手伝いましょうか。最近は藍が優秀だから楽してるけど、たまにはこういう生活を楽しまないと幻想卿を作った意味がないものね」
紫の力なら外の技術を使うぐらいいくらでもできる。
だが、それらのせいで外の世界に自分たちの存在は否定される運命にあった。
「好きにすればいいわ。…じゃあ、掃除と料理どっちやる?」
「一緒にやらないの?」
2人でやらなければ紫には意味がない。
「分担したほうが早そうじゃない」
「そうだけどね…。分かったわ。特別に私の手料理を霊夢に食べさせてあげる」
今までずっと霊夢が作ってばかりいたので、丁度いい機会とばかりに紫が腕まくりして張り切る姿勢を見せる。
「ちゃんと食べられるんでしょうね…?」
「失礼ねぇ。とびっきりに美味しい料理を作ってあげるわよ」
ここまで真直ぐにはりきる紫も珍しい。
裏があるかどうか心配にはなったが霊夢は一先ず紫に任せることにした。
この場合、霊夢の思う裏とは違い紫の裏は霊夢の好感度上昇という可愛いものでしかないが。


「よう、霊夢。今日は掃除を頑張ってるんだな」
「当然よ。魔理沙も遊びに来たの?」
境内に降り立つ魔理沙に声をかえる。
「なんだ。他にも誰かいるのか?」
「紫が台所で料理してくれてるわ」
「へぇ。少し見てくるかな」
勝手口のほうから台所に向かう。
「おー珍しい光景だ」
「…何しに来たの?」
好奇心で見てくる魔理沙に対して、これ以上はないってほどに冷たい目でにらみ返す。
「え、いやうん。友人に挨拶をしにきたんだぜ」
「ふぅん。まぁいいわ。あんたをどうこうしたら霊夢に怒られるから見逃してあげる」
「何だか知らないけど助かったぜ。…って言うかお前霊夢にまだ告白してなかったのか?」
ザクッ
振り下ろした包丁が大根を真っ二つにする。
白い大根に負けないほどに魔理沙の表情も白くなる。
「…悪かったからその鋭利な物体を私に向けないでくれ! 大丈夫だ。今日はパチュリーに借りてた本を返しに行くから邪魔はしないぜ」
「もうそれならそういってくれればいいのに」
「今度からそうするぜ。じゃあな」

「あら、魔理沙帰っちゃうんだ」
「パチュリーところに行くからな」
「そう。珍しく紫の食事が食べられたのに」
「ははは、またの機会を楽しみにしてるぜ」
魔理沙は勢いよく飛び出していく。
その後ろ姿を見送りる2人。
「ねぇ紫」
「なぁに?」
「魔理沙ってモテるわね」
「え、えぇそうね。もしかして霊夢も魔理沙のことが!?」
何気ない一言にものすごく食いつく。
「まさか。あいつとは腐れ縁の親友よ」
「そうよね!親友よね!」
恋人ではない。
友達以上であっても欲しくはないけれどまだ大丈夫。
ちょっとした安心感が紫に生まれる。
一番大きいライバルと思われる魔理沙は今のところ敵ではない。
「何そんなにてんぱってんのよ? 紫には幽々子がいるじゃない」
「そうね。最高の親友だわ」
…恋人ではないけれど。
そう続けたいけど続けられない。
今の自分に余裕がない。
同じ年代の村娘なら今頃簡単に転がせるはずなのに何故だろうか?
言葉にできないイラだちともどかしさ。
なのに霊夢を求めている。
「じゃああんたの料理を楽しみにしてるから…。夜までには作ってよね」
「ふふ、まかせなさい」
長生きできる。
力が強い妖怪だけでは解決できないことは多いらしい。
恋だけは境界をいじれるものじゃない。
自分の心で霊夢の境界が動くまで…頑張るしかない。
「ほぼ毎日神社から動いてませんけど散歩とか行こうと思わないのですか?」
「別に思わないわね。境内の掃除だけで十分な運動になるぐらいに仕事になるし、文を含めて訪ねてくる人の多い場所だもの。動かない図書館とかいう2つ名の魔女がいるぐらいだからいいんじゃない?」
毎度ながら縁側で二人してお茶を飲む。
今日は足置きの天子がいないので完全に2人きりだ。
「まぁ霊夢さんが出かける時は異変か買い物ぐらいなんでしょうけど、たまには魔理沙やアリスさんみたいにお出かけするのも悪くはないんかなと思いますよ」
もじもじとしながら文は霊夢のほうを見る。
戦闘とかの勘はいいくせに、こういうことにおいては鈍感もいいところの霊夢はまったく気が付くことはない。
今でもトイレでも我慢してるのかしら程度だ。
「そうねぇ。引きこもりキャラはパチュリーに輝代だけで十分と言えば十分よね。適当に声をかけたら魔理沙あたりが思いつきで連れ出してくれるでしょうね」
「い、いや魔理沙さんじゃなくて…」
自分を指さしてアピール。
「ん、文もどこか面白い場所でも案内してくれるって言うの?」
「当然です。新聞記者として幻想卿を飛びまわる私は魔理沙さんにも負けないほどに世界を見てきてますから。野苺狩りとかが今のレジャーに最適ですね!」
どこで採れるかや、人間でも食べられる安全なものなどの資料をまとめたレポートを取り出す。
フルーツ(笑)ではないが、こういった果物をたまには取りに行くのも悪くはない。
文の提案に霊夢も多少は興味を示す。
「魔理沙よりは準備がいいわね。あいつといくと行き当たりばったりで…お陰で腸が鍛えられたわ」
「……なんとなくお察しします」
「これだけ資料もあるなら大丈夫そうね。旬は今なら早速行くわよ」
重い腰の巫女が立ち上がる。
面倒くさがりの霊夢をいかに連れ出すかが、争奪戦においても重要なファクターを占めている。
この一手は文が周りに比べて大きく差をつけたと言えよう。
「さてと、魔理沙とアリスに用事がないのに迷いの森に行くのは久しいわね」
「でしょう。それではお手を」
「ん?」
文の差し出した手を不思議そうに握り返す。
「足の速さなら負けませんし、こうして飛べば2人で合わせられます」
「そうね。もしかしたら魔理沙とアリスも一緒に野苺狩りをしてるかもしれない。取られる前にいいものを取らなくちゃ!」
「あ、あはは」
できればデートで楽しみたいのになと言いたいが、苦笑いを浮かべるぐらいしかできないのが悲しい立場だ。
足は最速でも恋愛は誰よりも早くゴールに行くことはできない。
誰よりも遅くゴールすることになるかもしれない。
「ほらほら。最速の天狗がぼんやりしてちゃダメじゃない。行くわよ!」
「そうですね!」
それでも、このレンズが二人の思い出を映し出すなら……彼女の生きた歴史を自分のために小さな新聞を作ろう。
今は……
「たくさんとれたらジャムにしてたまにはお菓子もいいですね」
最速最高の思い出を誰よりも多く映し出す!


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八神 桜花
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ロト6を当ててNEETになる
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雑談
自己紹介:
とってもバーニングしてる人
バーニングアリサをメインにSSを書いて誰よりも熱くなるつもりらしい
細かいことはメインHPまでどうぞ!






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