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「あいたたた。寝ぼけてたとはいえ電柱に頭ぶつけるなんて……なんて?」
あれ? なんで電柱が木になってるの。 「っていうか、ここどこよ」 見事なまでの森。 ビルのジャングルなら身近にあるが、本物の密林なんてお目に掛ったことは日本ではない。 携帯電話を取り出して見るが、圏外表示でNEET宣言。 登山の場合は下手に動かない方がいい時もあるが、気がついたら未知の世界でしたーなんて時はどうすればいいか教えてもらってないわよ。 少し考えた結果とりあえずけもの道を見つけることにしてみる。 動物が使う道ならばいずれ水がある場所に行きつく。 水がある場所を辿れば人間がいる場所に行きつく。 問題は何が起きたか分からないので人が存在している場所じゃなければ海にたどりついてゲームオーバーなんだろうけど。 とりあえずあたしは歩いた。 高かった日が傾き空が赤く染め上がる。 休憩はしていたがそれでも歩くことをやめずに歩いた。 今のあたしは歩き続ける気合だけしか武器がない。 「……野宿なんてやったことないわよ」 これ以上暗くなると歩くのは困難だ。 明かりを使って歩く手段も考えられるが、流石にこれだけ歩き続けると足がパンパンに張れている。 「完全に安全とは言えないけど、木の上なら狼みたいな奴からは身を守れるとか書いてたわね」 あたしは太い木の上に登り眠りにつくことにした。 完全に熟睡はできないがこれでも体力の回復にはなるだろう。 そう思いつつうつらうつらとする。 「ふぅん。こんなところに人間がいるなんて珍しい。…食べてもいい部類なのかー?」 話声? いや、この声はあたしの目の前にいる。 「……っ!?」 金髪の少女が赤い瞳であたしを見つめている。 にたぁと笑う口には鋭い牙。 狙いは……あたし。 木から飛び降りて最初の攻撃を回避する。 「なんなのよまったく!」 何か分からないままあたしは人肉食な種族と闘うことになった。 「あ、以外にも素早い。じゃあこうしちゃうぞー」 こうしちゃうぞー!って軽いノリで射撃魔法なんざ使うな!? あたしは突っ込みを入れるべくあたしは拳を構える。 「ふん!」 付近に散らばる魔法を断つ。 少し吸収した感覚が普通の魔法と違う気がするが、今の攻撃のお陰で魔力を吸収することができた。 「その程度の射撃じゃ…まだまだね」 「弾幕を斬るとかボムよりひどいぞー」 空飛ぶ人肉種族のいる世界にも爆弾はあるのね。 むしろこいつが少数民族なら、大半の人間は爆弾だので戦いたくはなるか。 「ふぅん。このあたしは魔を断つ能力なのよ!」 「なんとー! …匂いは外の人間ぽいのにどうなってるのかー」 外の人間ということはやはり少数民族ね。 向こうから襲ってきたんだし、正当防衛ぐらいなら認められるわよね。 無理なら全員ぶっとばす! 「さーて、そんなくだらない疑問はどうでもいいのよ。このあたしに喧嘩売ったのはあんた。そいつをあたしは買う。馬鹿ほざいてる暇があるならさっさと続きをしない?」 「人里に逃げれば助かったのに 外の人間は食われても文句言われないんだぞー!」 「あら、人里があるなんて幸運じゃない」 殴り合いで遊んでやろうかと思ったが、最優先事項のキーワードを前に気が変わる。 「みやー!」 煙幕なんてやっかいなものを。 月明かりすら遮られて視界は完全に真っ暗だ。 こんな時にインテリジェントデバイスかストレージデバイスがあればサーチが楽なんだろう。 「どうだー見えないだろー」 「見えなくて困ったわね。で、これって魔法か何か?」 「私の能力でいかなる場所も暗闇の空間を作れるんだぞ。怖いだろ!」 ふむ。 魔法の類とは少し違うみたね。 射撃魔法は吸収できたけど、これは…少し難しいわ。別世界の魔法だとあたしの体が完全に対応してないのかな。 「うわ!?」 あたしの頬を弾丸がかする。 こんな暗い中で攻撃をされたら回避するのは難しい。 「あ、こっちにいたのか」 …声でばれた! ばれた? ……もしかしてこいつも見えてない? とりあえずいっぱい飛んで来る魔法を右手で吸収しておく。 右手限定で魔力吸収能力があるけど、あたし右利きだから武器持ってたら吸収できないのよね! だったら殴ればいいじゃないとか簡単なこと言うけど、あの守護獣とか使い魔相手に訓練って正直小学生の体力じゃきついきつい。 あ、今はこんな話は関係ないか。 「うわー。もうだめだー(棒読み)」 「……いや、さすがに棒読みにつられるほど馬鹿じゃないよ」 「それは残念」 吸収した魔力をこめ 「烈風拳!」 撃ちだす! 「なんとー!」 …方向はよし。 「見つけたわよー」 「ひぃぃぃ」 勢いをつけたままショルダータックル。 軽い少女は楽に宙に浮く。 「このあたしに喧嘩売ったことを後悔するがいいわ!」 空に舞い上がる少女を掴み 「パワーダンク!」 地面に叩きつける。 死にはしないだろうが、普通の人間ならこれで当分は動けないはず。 「うー痛いのだ」 「そりゃ喧嘩だもの。まだやるなら立ちなさい。相手になるわよ」 「……ルーミアの負けなのだ…」 「分かったわ」 あたしは倒れている少女の前に立ち手を差し出す。 「え?」 「勝ちと負けが分かればこれ以上は無駄よ。…またあたしを食べようとするなら今度は今以上にボコるけどね」 「……」 「分かったら返事なさい」 「わ、分かりました!」 「よろしい。えーと、あんたはルーミアでいいのね。あたしは、アリサ。アリサ・バニングスよ」 PR ![]() ![]() |
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