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ユーノは己の拳を握りしめる。
刺さった爪が肉を突き破り床に赤い雫を垂らしていた。 ヴィヴィオと一緒にいるときにこの情報を聞いたのは、まだ幸いだったかもしれない。 一人のときに聞いてしまったら互いに歯止めが効かなくなっていただろう。 集中治療室の前でユーノ アルフ ヴィヴィオの3人が暗い表情で並べられたパイプ椅子に座る。 「…ヴィヴィオを護ってやれなんてことは言えない状況だね」 結界と防御がいかに優れていても、エースオブエースが意識不明の境目になるほどの攻撃力を防ぐ術はない。 「かといって局員が数だけいる施設に保護してもらっても無意味だと思う。…ヴィヴィオ、これは僕からの問いかけだ。聖王として生まれたヴィヴィオ を普通の女の子として育ててあげたい。その思いは誰もが抱いている。その上で騎士としてこの状況に立ち向かうか…本局の施設に行くか……好きなほうを選ぶ んだ」 「ちょっとユーノ!? あんな危険なやつがいるのにヴィヴィオに剣を持たせるというのかい!」 ユーノの襟をつかみアルフは牙をむき出す。 それでもユーノは怯むことなくヴィヴィオを見つめる。 「僕だってヴィヴィオを戦いの場に出したくない。だが、それでもあいつはどんな状況でも来るだろう。だから、これ以上戦力を分散させて落される前に戦える環境を作り上げるか…助けてもらうかしかないんだ。今の生活のままではこの子を救う手だてがないんだよ」 高町なのは フェイト・T・高町 八神はやてとヴォルケンリッター。 全て規格外のエースクラスの能力者がただ1人の王の前に敗北している。 唯一の幸運はなのはとフェイトまでもが拉致されなかったことだろう。 「私がいるからこうなるんだよね……だったらヴィヴィオなんていないほうが皆…」 吠えるヴィヴィオの頬にユーノの平手が飛ぶ。 「そんな悲しいことを言うんじゃないよ」 怒りと悲しみの表情でヴィヴィオを抱き寄せる。 ゆりかごの中でなのはに抱きかかえられた時と同じぐらいに温かかった。 「たしかになのは達は怪我をしちゃった。けれどね、それでもいいから護りたいんだよ。たとえ自分が死ぬことになろうとも護りたい人が人間にはいる んだ。この世界にいなかったほうがいい人間なんていない。…こうなることは誰も望んではいなかったけどね。それでも人間は誰かのために戦える。…なのは達 をこうした王という存在も、もしかしたらヴィヴィオみたいに操られてるのかもしれないし、古代ベルカが滅んで新しい文明になったことを理解していないのか もしれない。そうだとしたらこれ以上不幸な連鎖が生まれる前に止めてあげないとね」 なのはなら恨みで相手を撃たない。 力あるヴィヴィオは恨みでより強くなることはできるだろう。 だがそれでは何1つなのはという存在から学べないことになる。 「ユーノさん。ごめんなさい。私…戦うよ」 「いいのかい? 今までの模擬戦のような温い環境じゃないんだよ?」 「それでも私は聖王だから。…最後の夜天の王八神はやてを助けるの。古代ベルカではもしかしたら夜天の王とはいがみ合った存在かもしれない。でも、この時代は違うということを相手の王にも教えてあげたい」 ゆりかごがあってこそ成り立つ聖王の強さ。 それが完全に破壊された今では聖王と言えども、完全な力とは言い切れない。 「そうか。だが、ヴィヴィオにはここで止まってもらわないと困るのでな」 「…シグナム!?」 烈火の将の一太刀が手加減なしでヴィヴィオに向けて振り下ろされる。 「……いい反応だな」 レヴァンティンの切れ味の前にパイプ椅子が真っ二つに分かれる。 3人の背中に冷たい汗が流れる。 「どういうつもりだい!」 「ヴィヴィオを連れてくるか…無理なら殺す。生き延びたければ剣を抜け聖王よ」 待機モードのバルムンクを目覚めさせる。 始めて実戦として戦う相手が烈火の将というのは重荷もいいところだ。 「そうだ、それでいい。……これでいいだろう」 シグナムは多くは語らない。 3人も問いかけたところで無駄だということは百も承知。 「シグナムさん!これは…」 「何も言うな。今の私はお前たちの敵だ」 戦いは初心者のヴィヴィオ。 前線を離れてずいぶんとたつユーノとアルフ。 正直絶望的な戦力差だ。 実はヴィヴィオの才能が開花して…なんて優しい現実は世の中にはない。 「アルフ ヴィヴィオ。二人で数分ほど粘ってくれないか。フェレットモードの僕ならシグナムの追跡できないルートから管理局に助けを求めに行ける。さすがのシグナムも大量の局員を前に戦うなんてことはしないだろう」 「分かった。20分なら耐えてみる」 シグナムに教わった基本を護り剣を構える。 剣の技術だけで生き残れるとは思えない。 「ディバインショット!」 先制攻撃はヴィヴィオ。 中距離を取るためにけん制に射撃魔法を撃ちだす。 「拡散!」 射撃魔法が6つに分かれ広範囲に広がる。 威力は落ちるが回避スペースを潰すには最適な判断だ。 とくに室内戦となれば防御体制を取るしかない。 「そういう作戦か。悪くない。だが訓練の時と今の私を同じと考えては不合格だぞ!」 2発目のショットが拡散するよりも早くたたき落とす。 間合いを一気に詰めヴィヴィオ達の予定を狂わしにかかる。 「あたいもいることを忘れちゃ困るねぇ」 振り下ろすよりも先にアルフの拳がレヴァンティンを殴りつける。 顔を狙った攻撃と思ったシグナムは体制を崩す。 「てあああああ!」 ヴィヴィオの突きが懐を狙って打ち出されるが、それよりも早くシグナムは後方へ飛び刀で軽く受け流す。 「まだまだだ」 すれ違いにヴィヴィオの懐へ膝蹴りを入れ狙いをアルフへと切り換える。 フェイトも大きなダメージを負っている今、アルフが全力で戦うと大きな負担になる。 過去の経験などでフォローはできても、正面切ってシグナムを止めることは難しい。 「…ち、もう動けるのか」 先ほどヴィヴィオの食べた物がまき散らされているところを見ると、ピンポイントで攻撃を受けたことには違いない。 口の中に残った異物を吐き出しヴィヴィオはシグナムに剣を向ける。 ただの15歳の少女ではない力強さが目に宿る。 「見事だ。その剣を見事使いこなしてみせよ」 「…バルムンク。無茶するけどお願いね」 【了解】 剣を右手に持ち大きく左手を前へ突き出す。 大振りの右ストレートを撃ちだすかのように重心を低くそして体をひねる。 「牙突か」 ヴィヴィオが走り込む。 シグナムは待ち受ける。 (まだ打ち出さないだと!?) シグナムの剣が先にヴィヴィオに向けて迫る。 (違う初めから牙突スタイルはフェイントだったのか) 安定して使える中で一番威力のでる牙突の構えから撃ちだすラケーテンソード(突)。 たしかに当たればシグナムですら沈められる威力は期待できるが、初めから構えて攻撃をするこのスタイルを熟知している相手に当てれるほどヴィヴィオは強くない。 そんなことは本人が一番理解している。 先にシグナムに攻撃をさせることが目的だ! 振り下ろしから振り上げの2連撃目を受け止める。 その威力を反動に後方へ大きく飛ぶ。 シグナムに潜り込まれた近距離を帳消しにして、再び中距離を取り直す。 約束は倒すことではなくて20分間耐えきること。 無理して倒そうとして返り撃ちにあうなんてばかげた選択はしない。 「みごとだ。…状況が好ましくないのでな退くとしよう」 戦い開始から5分。 増援が来るまでに倒そうと思えば倒せるがシグナムは姿を消す。 ヴィヴィオとアルフは緊張の糸が途切れてその場に座り込む。 「こ、怖かったあ」 「まったくだよ。……でも、シグナムがこんな手段にでるってことは…はやての命が危ないかもしれないね」 「そう思う。…私が問いかけようとしたのは……殺しにきたはずのシグナムさんがバルムンクのリミッターを解除してくれたの」 殺しにきた人間がわざわざそんなことをするだろうか? おそらくシグナムは敵として動くしかない状況であり、アルフの言うことが高確率で正しい状況だということだ。 「アルフさんはフェイトママとなのはママをお願い。今のままじゃ全力をだせないでしょ」 「気がついてたのかい。…でもヴィヴィオは一人で大丈夫なのかい?」 「行方をくらましているザフィーラさんを探してみる。敵になるかどうなるかは分からないけれど、古代ベルカの王としてこの戦いから逃げたくはない。…ただの女の子に戻る日までは聖王としてね」 「ふふ、なのはと同じ目をするね。血は繋がらなくても親子は親子だね」 「…ありがとう」 PR
「大丈夫。あたしは冷静だ」
拳を強く握りすぎて手のひらから血流れる。 八神はやて 守護騎士シグナム シャマル リンフォースIIが捕獲されたという情報にヴィータは体を震わせる。 今すぐに飛んで向かいたい。 けれど今ただ一人で頭に血を上らせたまま突っ込んでも被害を悪化するだけだということも理解している。 ただただ何もできないやるせなさだけが時間の経過とともに積もっていく。 「アギトがなんとか生きて帰ってきてくれたおかげで手段を考える余裕はできた。…救出作戦のメンバーとして動くぐらいは許可してもらえるだろう」 ユニゾンできる八神はやてとシグナムの2人が捕まるということは根本的な戦力差が大きい。オーバーSランクを捕まえられるメンバーから奪還をするということは、オーバーSランクをさらに多く投入する気持ちで挑まなければならない。 「…ヴィータ探したぞ」 「クロノか」 「あぁ。はやて救出部隊からの伝言を言付かってね。悪いがヴィータの作戦参加は許可をすることができない」 「どういうことだよ!」 同じ身長のころなら胸倉をつかんで問い詰めただろう。 まさかの却下でヴィータは激しい剣幕で迫る。 「…奴らの狙いははやてと君たちヴォルケンリッターなんだ。そしてはやてが人質である以上君たちを自由に動かすことは危険だと判断された。それでもいくと言うならばヴィータのことを力づくで止めなければならないんだ」 はやて盾にされては騎士は動けないということは分かっている。 それでも心が理解したくない。 教官である自分が真っ先に命令違反をするわけにもいかない。 全て分かっている。 「…アイゼンを渡しておく。おさまりがつかないがアイゼンがなければ嫌でも我慢するしかないからな。……失くすなよなのは」 苦渋の選択の結果。自らを自制させるために相棒を手放す。 ヴィータは自室に戻り……叫び声をあげながら壁を殴りつける。 外にいても聞こえる声と拳の音。 下手をすれば骨が砕けてしまっているかもしれない。 だが、この騎士の怒りをだれが沈められようか。 「騎士なのに主の元に行けない。実に心苦しいことだね」 「誰だ」 暗闇の中から現れる少女。 「僕? 僕はエヴォだよ。夜天の王八神はやての騎士ヴィータ」 自分たちのことを知っている。 殴りかかって捕まえるか相手の動きを見るか。 「で、あたしに何の用だ? 今ものすごく機嫌が悪いんだ」 「それは困ったね。…キミをもらいにきたのに」 「ふざける……」 アイゼンを握りしめエヴォに向かい振り下ろす。 「そういうタイプなら僕も力でキミをもらい受けるとしよう」 片手でヴィータの一撃を受け止め振り飛ばす。 「…お前何者なんだ」 エヴォの撃ちだしたたった一撃の攻撃でヴィータの意識が飛ぶ。 問いかけには答えてくれているようだったが、耳に届くことなくその場に倒れる。
高町ヴィヴィオ。
ミッド式の成績はいたって普通。 習得速度なども特別目立った成績はなし。 ベルカ式の成績は上位で習得速度も速いがずば抜けた能力ではない。 エースオブエースの娘ではありながら魔法の成績に関しては並というのが、学校や周りの評価として記録されている。 母親と比べられたりもするがヴィヴィオ自身はそれで落ち込んだりする素振りはない。 「…世の中ありすぎる力っていうのも不幸だもんな」 ヴィヴィオの通知表を見てヴィータはつぶやく。 ヴォルケンリッターやナンバーズにエースの母親など、ヴィヴィオに魔法を教えている人間はたくさんいる。 それだけいてこの程度の成績なのかと普通は思われるだろう。 「だからデバイスにリミッターをかけているんだけどね」 実際はヴィヴィオ本人とデバイスに大きなリミッターをかけている。 レリックがなくなったとはいえヴィヴィオの魔力はS-があるのではないかとも言われているし、本人の才能と努力する継続力はまさに母親譲りだ。 「それに本来の力を今のヴィヴィオが使うと私みたいに体がついてこなくて壊れてしまう」 「そこまで心配しておきながら、ヴィヴィオがシグナム達と鍛練するのとか自分で魔法を教えたりとかよく思い立ったな。私もなのはの頼みだからやってるけどさ、心配でしかたないぜ?」 「私も心配だよ。でも何も知らないまま魔力が暴走する可能性もあるわけだし、それならちゃんとした知識とかを教えて自分の扱える魔法を理解しておくほうがいいと思うの」 「なるほどな。…ヴィヴィオはなのはに憧れて砲撃魔法を覚えようとしているけど、ありゃ典型的なベルカ騎士の素質なんだよなぁ」 ディバインバスターを習得はしたが、やはり目標の性能を引き出せないし射撃系呪文全般においては近接戦の技術と比べて覚えが悪い。 「そのおかげであの学校で他の生徒と同じぐらいだから、私としては嬉しいところだよ」 母親の表情で喜ぶ表情にヴィータもしゃーねえかと言いながらヴィヴィオの頑張りを応援する。教官としてはベルカ式の技術を教えたいが、普通の女の子として育てたいが第一にある時点で、管理局員を目指さない限りは必要がない。 「…ん、緊急通信だ。何か大きな事件が起きたかな」 教官である2人に緊急通信がある場合、JT事件などをはじめ前線メインの局員だけでは手が足りないなどの時が多い。 「…嘘だろ」 内容を確認した二人の顔から血の気が引いていく。 「ヴィヴィオの持っている特注デバイス使ってもいい?」 「うーん。凄く使いにくいと思うよ」 訓練生時代のスバルやティアナ同様、オリジナルデバイスを持ってくる生徒は何人かいる。大半は親がお金もちだからという贅沢な奴が多い。 ヴィヴィオも一応母親である2人は管理局でも階級が高い方で、お金の面でいえば裕福な方であるが、リミッター制限をつけるためになのはが特別に用意したものである。 シグナムのレヴァンティンを参考にボーケンフォームとシュランゲフォームを排除し、ラケーテンフォームを追加したガンブレイド型デバイス。 邪魔な機能を完全に省いて、カートリッジはシリンダーに入れるリボルバー式。さらには手動リロードと言う無骨もいいところなデザインで14歳の少女が持つにはあまりにも可愛げのない。 まさにこれ以上はないってほどのベルカ式搭載のアームドデバイス。 デバイスに性格があるならバルディッシュに似た無口なタイプだ。 「バルムンク…いいかな?」 「OK」 バルムンクと呼ばれたガンブレイドは、ヴィヴィオの友人の手の中でその形を展開していく。 「…重っ!?」 手渡された少年はあまりのおもさにバルムンクを落としそうになる。練習用デバイスとは違い、ヴィヴィオの持つバルムンクはまさにレヴァンティンを参考にした実戦向けのデバイスで重量は軽く3倍はあると言っていい。 「とりあえず補助魔法を……」 少年の得意な補助魔法を発動させようとするが、彼が頭で組み立てた魔術式をバルムンクは受け付けない。 「…あれ?」 「ね、使いにくいでしょ」 ヴィヴィオはバルムンクを返してもらう。 「バルムンクごめんねー。インテリジェントデバイスと違ってこの子はこうしないと駄目なんだよ」 ヴィヴィオの展開する魔術式は、他のデバイスならサポートして省略してもいい範囲まで含まれている。 普通の局員なら覚えなくても十分に生活していけるほどの細かい式だ。 「こっちのデバイス使えばヴィヴィオの成績はもっとよくなるんじゃないの?」 汎用性が高く幅広く補佐してくれるインテリジェントデバイスや演算能力などを強化したストレージデバイスを指さす。 「そうなんだけどね。この子はママや大切な友達が作ってくれたデバイスだから」 変わったものを作る親だなと少年は心で思いながらも空気を読んで言葉にはしない。 高町なのはの名は有名で、その人が考えもなくそんな変なものは作らないだろうということは学生でも理解できる話だ。 「あ、ユーノさんが来たから私帰るね! また明日ー」 「またねー」 今日のお迎えはユーノだった。 立場上ある程度の護衛はつねに誰かがいる状況であるが、基本的には友達同士で帰るところを遠くから見ている程度だ。 だが、たまに一部の護衛はこうして一緒に帰るために姿を現せる。 そのうちの1人がユーノである。 「元気にしてたかいヴィヴィオ」 「うん! バルムンクも元気だよ」 「sir」 相変わらず無口なデバイスだなとユーノは苦笑を浮かべる。 レイジングハートならユーノもお元気ですか? と、気のきいた返し文句の1つでも言うところだ。 「ヴィヴィオには少し残念なお知らせだけど、ママ達は緊急事態で今日は帰れないらしいんだ。アルフも遊びに来てくれているし今日は僕の家でお泊まりになるけどいいかな?」 「いいよ!」 2人ともに急用ができたときは、アイナさんの家やユーノの家でお泊まりはよくある。まれに八神家にお世話になることもあり、機動六課の面々には今でもお世話になっている。 「じゃあ明日の準備だけ取ったら今日は3人でご飯を食べにいこう」 「わーい」 2人は手をつないで帰路につく。 |
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